今年の和心庵初釜には藤井誡堂老師筆の「白鶴舞老松」(はっかくろうしょうにまう)を掛けた。
いつものように先ずは筆跡からの印象を皆さんに問い、それから意味を考える。読もうとしないのが先ず大事だと師から教えられた。掛け軸は「墨跡」と言う。書かれた「墨」の「跡」をあるがままに受け入れる。(なので、漢字が読めないアメリカ人の方が素直に受け入れ易い場合が多い。私はいつも四女(12歳)の奇想天外な解釈を聞くことも楽しみにしている。)
次に書かれている言葉の意味を考えたりするのだが、面白いのはこれを英語でも考えてみると言うこと。当たり前だが、漢字がわからない方には英語で説明する。そこで、いつも問題になり、面白いと思うのが、主語や目的語などが「単数か複数か」。英語で書かれている文書には大体明記してある。しかしながら、日本語だとそれがない。
この掛け軸の場合、鶴は白い鶴なのだが、それが一羽か二羽か。いや、もっと沢山の鶴が老松の上(下、横?)で舞っているのか。
それぞれにどんなイメージなのか伺うのも楽しい。みんな、違っているから。
一つの掛け軸にじっくり向かい合ってみるのは面白いものだ。その時の自分次第で、また違った思いを抱くことも沢山あるから。